脂肪は私たちの体にとって必要不可欠な栄養素です。しかし、「高脂肪食」と聞くと、健康への悪影響が懸念されることが多いのも事実です。
腸内細菌と健康に関連する論文では、しばしば「高脂肪食」が使われ、高脂肪食を頻繁に食べると腸内細菌のバランスが破綻して健康を害することが数多く報告されています。
では、この「高脂肪食」とは一体どのような脂肪のことを指しているのでしょうか?
具体的な油の種類や脂肪酸の種類を挙げて、健康との関わりを見ていきましょう。
高脂肪食と健康への影響
今回ご紹介する論文では、3つの油を用いて研究が行われました。その3つとは「牛脂」「羊脂」「大豆油」です。この油を継続して摂取すると、マウスで以下の影響が現れました。
- 体重の増加
高脂肪食を摂取したマウスは、通常食を摂取したマウスに比べて有意に体重が増加しました。 - 耐糖能の低下
血糖値が上昇し、糖代謝に問題が生じました。 - 脂質異常症の進行
トリグリセリド(中性脂肪)やLDL(悪玉コレステロール)の上昇、HDL(善玉コレステロール)の減少が確認されました。 - 肝臓へのダメージ
肝臓の炎症や脂肪蓄積が観察され、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の兆候も見られました。
高脂肪食とは、どれくらい脂肪が多いの?
普段、私たちの一般的な食事では脂肪摂取が総カロリーの30%程度に設定されています。一方、高脂肪食は摂取カロリーの40〜60%以上を脂肪から摂取する食事を指します。これによって、エネルギーの過剰摂取や脂肪の蓄積が進みやすくなります。
また、実験食として用いられる高脂肪食は牛脂や紅花油が配合され、以下の種類の脂肪酸が主に含まれています。
高脂肪食の脂肪酸の種類:飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸)、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)、多価不飽和脂肪酸(リノール酸)
つまり、オレイン酸を含むオリーブオイルが体に良いからと言って、過剰な量を使いすぎるとやはり健康に害があります。
また、飽和脂肪酸やリノール酸は外食や加工食品に多く使われる傾向があります。油は「量を摂りすぎないことが大切」と考えると、日常的に料理に使う油を細かく考えることよりも、外食やコンビニ食、お菓子などの摂取をなるべく控えることで、1日に摂取する油の総量を減らすことの方が大切です。
全ての油は体に必要!日常的に使う油を賢く選択しましょう
先ほどから登場している高脂肪食に含まれるリノール酸も飽和脂肪酸も、実は健康維持のために必要不可欠な働きをしています。リノール酸はオメガ6脂肪酸と呼ばれ、体内で合成できないため食事から摂取する必要があります。細胞膜の成分になり、免疫機能にも重要な役割を果たしています。
飽和脂肪酸も、普段生活する上では大切なエネルギー源として役立っています。
一方で、オメガ3脂肪酸と呼ばれるαリノレン酸やEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、脂肪酸の中でも抗炎症作用や脂質代謝改善作用が期待されるため、積極的に摂取することが推奨されます。(もちろんオメガ3でも過剰摂取は体重増加や肥満リスクにつながります)
そこで、どのようにそれぞれの油を使ったら良いかについて、おすすめの方法をお伝えします。
・大豆油、ひまわり油、コーン油、サフラワー油
リノール酸を主体とする油です。必要不可欠な油ですが、過剰になると炎症性物質が生成されやすくなるため要注意。
使用量の目安:今、日常的に使用している量の半分くらいを目標にしてみましょう。
・肉脂、羊脂、豚脂、バターなど
動物性の食品には、飽和脂肪酸が多く含まれる傾向があります。過剰摂取は動脈硬化や心疾患リスクを高める可能性があります。
摂取の目安:肉類は大切なタンパク源なので、食べることは大切です。肉ばかりにならないように、食べ過ぎの人は量を控えめにする、野菜もしっかり食べる、タンパク源を魚介類や大豆食品を増やすなど、バランスに注意しましょう。
・オリーブオイル
オリーブオイルの主成分のオレイン酸は、摂りすぎには注意が必要ですが、炎症を抑え、心血管疾患のリスクを低下させる効果があります。また、ポリフェノールやビタミンEなどの抗酸化成分も含みます。
使用量の目安:1日あたり大さじ1〜2杯程度
・亜麻仁油やエゴマ油
オメガ3脂肪酸が豊富で、リノール酸とのバランスを整えることで炎症を抑える効果が期待されます。熱に弱いため、サラダやヨーグルトに直接かけたり、スムージーに添加したりしてみましょう。
使用量の目安:1日小さじ1〜2杯程度
・ゴマ油
リノール酸が主体ですが、抗酸化作用を持つセサミンが含まれています。香りが強いため、少量で料理を引き立てる働きがあります。
使用量の目安:小さじ1杯程度
日常に使う油を選ぶ際には、脂肪酸の種類と摂取量のバランスを意識することが重要です。オリーブオイルやオメガ3脂肪酸を豊富に含む亜麻仁油・えごま油は、健康的な脂肪酸を補給する理想的な選択肢です。
また、調理法や目的に応じて適切な量を使用し、エネルギー過剰摂取を防ぐことが、健康維持の鍵となります。
(参考文献)
Comparative analysis of high-fat diets: Effects of mutton, beef, and vegetable fats on body weight, biochemical profiles, and liver histology in mice
Heliyon 10, e39349 (2024)
コメント