日本におけるアルコール性肝炎の現状
アルコールを飲み過ぎると色々な臓器に病気が起こります。なかでも肝臓病は頻度が最も高く、重篤になる病気です。アルコールによる肝障害は飲酒量と飲酒期間に沿って進行しやすいのですが、女性の中には少ない飲酒量でも短期間に肝硬変になる人もいます。
まずアルコール性脂肪肝になり、進行するとアルコール性肝炎、その後肝線維症、そして肝硬変や肝臓がんへと移っていきます。日本でのコホート研究をまとめた解析によると、男性では1日69g以上(日本酒で3合以上)から肝臓がんリスクが1.66-1.76倍に増加しています。女性ではその1/3程度の量である1日23g以上でリスクが3.60倍に増加しています。こうした状況を防ぐためにも、アルコールの飲み方に気を付けることが大切です。

また日本人はアルコール代謝酵素の遺伝的多型により、アルコールの分解能力に個人差があります。これも、アルコールを原因とする病気の発症リスクに影響を与えます。

水溶性食物繊維がアコール性肝炎を軽減する可能性
2024年7月にCell Host & Microbe誌に発表された論文で、マウスにおいて水溶性食物繊維が腸内細菌に影響を与えることでアルコール性肝炎に対して有益な効果をもたらすことが示されています。
そのメカニズムは以下のとおりです。
- 腸内細菌の変化
水溶性食物繊維が、腸内細菌の一種であるBacteroides acidifaciensの増加を促進させます。これまでの他の研究で、B. acidifaciensはインスリン感受性改善や肥満を抑制することが報告されています。
- B. acidifaciensは胆汁酸ヒドロラーぜという酵素を作ることで、腸内で脱抱合型の胆汁酸を増加させ、これが胆汁酸の濃度を調節する受容体を活性化します。この受容体の活性化によって線維芽細胞成長因子-15(FGF15)というタンパク質が生成されます。
- FGF15は血流を通じて肝臓に働きかけ、肝細胞でオルニチントランスフェラーゼという酵素を増加させます。この酵素がポリアミンの一種であるオルニチンをグルタミン酸に変換することで肝臓でのアンモニア解毒が促進され、肝細胞の損傷が軽減されます。
つまり、水溶性食物繊維によってBacteroides acidifaciensを増加させることで、腸内で胆汁酸の働きが変化し、それが肝臓に働きかけることで解毒酵素が活性化させることが示されています。アルコール摂取から肝臓に生じるアンモニアの解毒には、食物繊維が大切だということです。

実は、Bacteroides acidifaciensはマウスでは腸内に豊富に存在する腸内細菌ですが、人間の腸内にはほとんど存在しません。その代わりに、近い種類であるBacteroides ovatusなどが同じような役割を果たしていると予測されています。Bacteroides属は増加しすぎると高脂肪食由来の悪い代謝物を作る場合もありますが、一定の存在量では炎症を抑制するなど有益な働きをしています。
水溶性食物繊維の中でも褐藻類由来成分がおすすめ
今回の論文とは別の研究で、一般的な陸に生息している植物由来の食物繊維はBacteroides acidifaciensを増加させる効果が弱いといわれています。そこで推奨されているのが褐藻類由来の食物繊維です。
褐藻類とは、ワカメやコンブ、ヒジキ、モズクなどの藻類のことです。これらの褐藻類に含まれるフコイダンやアルギン酸といった食物繊維(難消化性成分)が、Bacteroides acidifaciensを増加させることが報告されています。人間での優勢菌であるBacteroides ovatusもフコイダンやアルギン酸を利用できることがわかっています。
もし飲み会に参加したり、ご家庭でお酒を飲まれる場合には、海藻をしっかり一緒に食べることがおすすめです。もちろん、飲み過ぎには要注意です。
(参考文献)
Dietary fiber alleviates alcoholic liver injury via Bacteroides acidifaciens and subsequent ammonia detoxification
Cell Host & Microbe S1931-3128 (2024)


コメント