感染防御に役立つIgG抗体って何?
新生児期は、免疫の発達にとって重要な時期です。新生児の腸内は免疫が未熟であり、病原菌が定着しやすくなっています。そのため新生児感染症は新生児の罹患率も死亡率も高く、腸管感染症による下痢性疾患は、世界中で子供の死亡原因の大きな問題になっています。

この新生児の未熟な免疫を助けるために、母親の免疫(抗体)が大切な役割を持っています。母体の抗体は①妊娠中に胎盤から胎児に伝えられ、②出生後は母乳を介して新生児に伝えられます。そのため、出生後の赤ちゃんにとって母乳は乳児の腸管の中で、感染に対する最初の防御機能となります。
抗体には色々な種類がありますが、体内で最も多く存在する抗体の一つに免疫グロブリンG(IgG)があります。IgGは血液や体液中に広く分布していて、体内に侵入する病原体に対して防御力を発揮します。IgGは病原体に結合してその働きを抑え、マクロファージや好中球などの免疫細胞が病原体を認識しやすくする役割を持っています。

これまでの研究で、IgGは腸内細菌によって誘導される(産生が促される)ことがわかっています。そこで今回ご紹介する論文では、母体の腸内細菌によって誘導されるIgGが、新生児に対してどのように機能し、腸内の病原菌に対して免疫力を発揮するかどうかを検証しています。
母乳を介してIgGが新生児の免疫を強化する
2022年のScience Immunologyに発表された研究では、母乳と新生児の免疫の関係について次のことが報告されています。
- 母乳を介したIgG抗体の新生児への移行
研究チームは、母親の腸内細菌叢によって誘導される母親のIgGが、母乳を通じて新生児の腸に移行することを発見しました。そして、これらのIg Gは免疫が未熟な新生児の腸内で細菌に結合し、病原菌が新生児の腸内(腸の粘膜)へ定着することを抑制することがわかりました。

- 免疫のさらなる強化
母親マウスを腸内細菌由来の特殊な抗原で免疫すると、新生児マウスにおいて病原性細菌に対するさらなる感染防御機能が得られました。つまり、母親の腸内細菌を食品成分やプロバイオティクスで強化すると、新生児の免疫強化にもつながる可能性があることが示されています。
- IgG欠損マウスでは新生児の免疫も弱くなる
IgGを作ることができなくなったマウス(IgG欠損マウス)では、母親マウスの腸内細菌叢のバランスが崩れ、新生児マウスの腸内で炎症性の免疫細胞が増えてしまうことがわかりました。また、成人期には大腸炎に罹患しやすくなることも示されています。

母親の腸内細菌叢は、新生児の健康に大きな影響を与えます。今回の研究のように母乳を通じて供給されるIgG抗体は新生児の腸内細菌叢のバランスを保ち、病原菌に対する免疫を強化する役割を持っています。また、子育て中も母親が腸内環境を整えることで、赤ちゃんの腸や免疫をさらに強くすることができるでしょう。
また、こうした研究で免疫の仕組みが明らかになることで、母乳が出ない(出にくい)母親のためにIgGが強化されたミルク開発なども可能になります。それぞれの育児の状況において、最適な選択が可能になることを期待しています。
(参考文献)
Maternal gut microbiome–induced IgG regulates neonatal gut microbiome and immunity
Sci. Immunol. 7, eabh3816 (2022)


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