私たちの体の中にも「時計」があります
「朝起きるといつも胃がもたれる」
「どうしてもなかなか朝起きられなくて、動き始めるのが遅い」
そうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
私たちの体には「体内時計」と呼ばれる周期があります。この周期を「概日リズム」と呼んでいます(英語ではサーカディアンリズム)。
体内時計の周期は約25時間で、地球の周期である24時間とは約1時間のズレがあります。このズレを整えるために必要なのが、「朝の光」と「朝食」です。主にこの2つの働きによってズレが修正され、私たちは健康な毎日を送ることができています。
この体内時計によって「体温」「ホルモン」「免疫」「代謝」などが調節されています。
実はこの体内時計の遺伝子の変異によって体内時計が乱れやすく、朝の胃の調子が優れない人がいることがわかっています。

朝の胃運動の低下は時計遺伝子のタイプが原因
日本の女子大学生173名(平均年齢19.4歳)を対象に、
・20分間の胃運動測定
・遺伝子解析(時計遺伝子:CLOCK3111T/C多型とPER3 VNTR多型)
が測定されました。
細かい遺伝子の説明はここでは省略します。体内のリズムを調節する代表的な時計遺伝子とご理解ください。
その結果、30%以上の人に何らかの遺伝子変異(多型)があることがわかりました。さらに、その遺伝子変異の組み合わせによって、胃の運動性への影響が異なることも示されています。
朝の胃運動が顕著に低下する組み合わせは「T/CまたはC/CとPER34/5またはPER35/5の組み合わせ」であり、この組み合わせを持つ人は対象者の14%でした。他の組み合わせでも、緩やかながら朝の胃の運動低下に関連していました。
つまり、遺伝的背景によって、14%以上の人は時計遺伝子の影響で元々「朝の胃運動が低下している」と言えます。

この遺伝子型を持つ人は、他の研究で以下のこともわかっています。
・血漿中のグレリン(食欲増加ホルモン)が高い
・総エネルギー摂取量が高い
・肥満リスクが高い
・朝の活動性が低く、寝起きが悪い

もしかしたら、朝は胃の調子が悪くて寝起きも悪いけれど、昼や夜にたくさん食べてしまい太りやすくなっているのかもしれません。もしご自身の朝の様子に当てはまるな、と感じる方は元々遺伝的な背景で胃腸の活動が影響を受けやすいことがあると知っておくことは大切です。
胃の運動を低下させる遺伝子はブルーライトに影響を受けやすい
さらに、この遺伝子型を持つ人はブルーライトの影響を受けやすく、睡眠の質を悪化させることが他の研究で示されています。
PER35/5遺伝子型は、夕方にブルーライトを2時間浴びると、通常の人よりも顕著に覚醒反応を示す(睡眠不足になりやすい)と報告されています。現代社会ではスマホやデジタルデバイスによってブルーライトを浴びる機会が多くあります。

日本人女性の睡眠時間は世界で最も短いことが知られており、今回ご紹介した論文の参加者の睡眠時間も約6時間ととても短い結果でした。短い睡眠時間が、朝の胃運動低下と関連している可能性があるため、胃腸と睡眠は深く関連していると考えられます。
遺伝子のタイプを日常生活で知ることはとても難しいです。
また、遺伝子を変えることもできないため、ご自身の生活リズムで当てはまると感じた場合は普段の習慣に気をつけてみましょう。
具体的には、
・朝食は体内時計にスイッチを入れるため大切なので、胃の運動が悪い場合は消化の良い食材や調理方法を選ぶこと
・朝調子が優れないと昼や夜に活動が偏りがちになるため、なるべく昼と夜に食べすぎず、朝食を摂ることを習慣化すること
・夕方や夜間にブルーライトを浴びると通常よりも睡眠に悪影響が及びやすいため、今よりもスマホ時間を短めにすること
が大切になってきます。
「朝弱い」「朝胃もたれがする」というのはダラシないと言われることもありますが、遺伝的な背景による場合があることを理解して、普段の生活を自分自身や家族で整えていくことが必要ですね。
(参考文献)
Circadian Rhythm Genes CLOCK and PER3 Polymorphisms and Morning Gastric Motility in Humans
PLoS ONE 10(3):e0120009 (2015)


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