日頃から食物繊維をたくさん摂りましょうと言われますが、皆さんは実際にどのくらいの量を普段から摂っているでしょうか?
日本人の食事摂取基準(2020年版)において、厚生労働省は成人の1日の目標食物繊維摂取量を次のように設定しています。
・男性:20 g以上
・女性:18 g以上
一方で、最新の国民健康・栄養調査によると、日本人の実際の食物繊維摂取量は平均で14 g前後とされ、特に20代女性では平均摂取量が11.5 gと推奨量を6.5 g程度も下回っているのが現状です。
その不足分を補うために多くの健康食品・機能性表示食品や特定保健用食品が販売されていますが、コンビニエンスストアでも手に入る「さつまいも」が手軽に食物繊維を摂取できる食品として注目されています。
今回は、さつまいもを女子大学生に摂取してもらい、排便状況と腸内細菌に対する影響を調べた研究をご紹介します。さらに、調理方法による効果アップの方法もご説明します。
女子大学生に対するさつまいも摂取効果の検証
日本の大学に通う健康な女子大学生22名(平均年齢20.9歳、BMI20.3±1.1)を対象に、
・1日300 gのさつまいもを1週間摂取
・1日100 gのさつまいもを1週間摂取
という内容で排便状況と腸内細菌の検査が行われました。

300 gのさつまいもは、大きめのさつまいも1個分、100 gは小さめのさつまいも1個分になります。
その結果、排便量は300 g摂取および100 g摂取でどちらも1.5倍以上に有意に増加しています。また、排便回数は100 g摂取で増加傾向に、300 g摂取で有意に増加する結果となりました。体感のアンケートでも、300 g摂取ではお腹の調子が良くなり、排便がスムーズになったという結果が得られています。
次に、腸内細菌の調査が行われています。
健康の指標として重視されている酪酸産生菌であるFaecalibacterium属が、100 g摂取で増加傾向に、300 g摂取で有意に増加することが示されています。一方で、Eubacterium属やRuminococcus属を含む群ではどちらの摂取量でも有意に低下していました。さつまいもには、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、難消化性デンプン(レジスタントスターチ)が含まれています。さつまいもに含まれるこうした難消化性成分は、腸内細菌のうちFaecalibacterium属に利用されやすい種類であると予想できます。

調理方法(加熱方法)によってさらに効果が上がる!?
先ほど述べた、さつまいもに含まれる難消化性成分について簡単にまとめます。難消化性成分とは、「人の消化酵素で分解できない、糖が多数結合した鎖状の成分の総称」です。
食物繊維:
食物繊維は水溶性と不溶性に分類され、どちらも腸内で異なる役割を果たします。不溶性食物繊維は腸内でゲル状になり、消化を緩やかにし、血糖値やコレステロールの安定に寄与します。水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなり、便通をスムーズにする役割があります。
レジスタントスターチ(RS):
RSは難消化性でんぷんで、腸内で発酵され短鎖脂肪酸(SCFA)を生成します。これにより、腸内環境の改善や血糖値の安定化、脂質代謝の調整に役立ちます。
実は、こうした成分が加熱方法(蒸し加熱・電子レンジ加熱)によって含有量が変化することが報告されています。

食物繊維の変化
・水溶性食物繊維:蒸し加熱・電子レンジ加熱のどちらも量に変化なし
・不溶性食物繊維:蒸し加熱後に未加熱と比べて2倍に増加(電子レンジでは有意差なし)
レジスタントスターチの変化
・未加熱の含有量(0.93%)から、蒸し加熱後の含有量が1.89%に増加
・電子レンジ加熱後にも1.34%に増加
これらの結果から、蒸し加熱はさつまいもの食物繊維(特に腸内細菌のエサになる不溶性食物繊維)とレジスタントスターチの量を増やす効果的な調理方法であることがわかります。
最初の研究で、100 gよりも300 g摂取(どちらも200-210℃で1時間加熱した焼き芋として摂取)によってさつまいもの腸内環境に対する効果をより強く感じることがわかります。でも、毎日大きめのさつまいも一本を食べるのは多すぎる、という場合は、蒸し調理を上手に活用することで少量でもさつまいもの効果を実感できるかもしれません。ぜひ毎日の食事に取り入れて、良好な腸内環境を維持していきましょう。
(参考文献)
さつまいもの摂取が女子大学生の排便状況並びに腸内常在菌構成に及ぼす影響
日本栄養・食糧学会誌 69, 229-235 (2016)
加熱方法の違いがさつまいもの食物繊維量と物理的性質に及ぼす影響
日本家政学会誌 71, 719-726 (2020)


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