「同じものと食べても、太る人と太らない人がいる。この違いがお腹に住む腸内細菌の違いでは?」
そのような考えが、2006年にNatureに発表されたいわゆる「デブ菌・やせ菌」の研究データに基づいて世界中に浸透するようになりました。でも、実は腸内細菌叢のタイプは人種や住んでいる地域、食べ物、遺伝的背景などによって大きく異なります。
そのため、一概に「デブ菌・やせ菌(研究的にはF/B比)」の考え方が日本人に当てはまるとは限りません。
こうした背景の中、2022年にNature Communication誌に掲載された研究で、腸内細菌の一種である「Blautia wexlerae(ブラウティア・ウェクスレラエ)」という菌が、日本人の痩せている人に多いのではないかと注目を集めています。
肥満や2型糖尿病の日本人はB. wexleraeが少ない
この研究では、日本人成人を対象とした横断的解析によって、Blautia wexleraeが肥満と2型糖尿病と逆相関する、つまり肥満や2型糖尿病の人の腸内にはBlautia wexleraeが少ないことが報告されています。

Bulautia wexleraeが腸内細菌の全体のうち「6%」以上となると、肥満や糖尿病リスクが低くなります。この割合は、市販の腸内フローラ解析でBulautia wexleraeが対象となっている場合には検出することが可能です。

また、このBlautia wexleraeを高脂肪食によって肥満と糖尿病になったマウスに口から投与すると、その症状が改善されました。
その他の腸内細菌の特徴としては、肥満や2型糖尿病の場合、Blautiaだけでなく有用菌の代表として知られるFaecalibacterium(フィーカリバクテリウム)やButyricicoccus(ブチリチコッカス)が減少していること、Megaspaera(メガスファエラ)が増加していることがわかっています。
Bulautia wexleraeによる有益な効果
Bulautia wexleraeは、S-アデノシルメチオニン、アセチルコリン、L-オルニチンという代謝物を作り出すことで、エネルギー代謝や抗炎症効果と関連しています。また、これらの成分は脂肪細胞内の脂質蓄積を減少させることも知られています。
さらに、Bulautia wexleraeはアミロペクチンという成分を分解して、コハク酸、乳酸、酢酸などの成分を作る能力があります。アミロペクチンはご飯に含まれるデンプンの一種です。伝統的な和食に含まれる白米摂取が、日本人にBulautia wexleraeが多く見られる要因かもしれません。

Bulautia wexleraeを腸内で増やす方法はあるの?
先ほど述べたアミロペクチン以外にも、Bulautia wexleraeは色々な炭水化物(糖質や食物繊維)を利用することができます。
例えば、β-グルカン、レジスタントスターチ、アラビノキシラン、ブナノキシランなどを利用して、腸内で代謝物として酢酸やコハク酸を産生します。こうした成分は、全粒粉の小麦や玄米などに含まれていてBulautia wexleraeを増加させます。一方で、脂肪分が多い食事はBulautia wexleraeを減少させるため要注意です。

Bulautia wexleraeが作り出す酢酸は、腸内でFaecalibacteriumなどの酪酸菌によって利用され酪酸が作り出されます。こうした菌から菌への代謝物のリレーによって腸内環境は健康に保たれています。何かの菌だけを増やしても、それを利用する他の菌がいなければバランスが乱れてしまいます。こうした点からも、バランスの良いカラフルな食事を心がけることが大切ですね。
(参考文献)
Oral administration of Blautia wexlerae ameliorates obesity and type 2 diabetes via metabolic remodeling of the gut microbiota
Nature Communications 13:4477 (2022)
Potential Applications of Blautia wexlerae in the Regulation of Host Metabolism
Probiotics Antimicrob Proteins. DOI: 10.1007/s12602-024-10274-8 (2024)


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