発酵食品は、微生物(例えば細菌や酵母)の働きによって食品成分が酵素的に変換される過程(発酵)を通じて製造されます。この過程は、食品の保存性を高め、風味を向上させる効果があります。また、食品の栄養的な価値を新たに付加することで、健康に有益な成分が含まれることでも知られています。
最近は発酵食品が健康に良い作用をすることを示す研究が増加しています。
特に、発酵乳製品(ヨーグルトやチーズなど)は研究分野でも注目されていて、ヨーグルトの消費が小児の胃腸炎のリスクを下げることや、発酵乳製品が中年期のフィンランド男性におけるうつ病リスクを低減することなどが報告されています。
他にも免疫やアトピー性皮膚炎の発症率低下、精神疾患のリスク低減なども発表されています。日本人においては、味噌や納豆などの発酵大豆製品の摂取が、高血圧、動脈硬化、総死亡率の低下と関連していると報告されています。
日本人の食生活にどのくらい発酵食品は根付いているのか?
これまでの日本の研究や食物摂取頻度調査では、日常的に摂取している発酵食品が実際にどのくらい普段の食事に取り入れられていて、栄養的に関わっているのか判断することが難しいことが言われてきました。
そこで今回ご紹介する研究では、日本の四つの地域(大阪、沖縄、長野、鳥取)を対象に、2002年11月から2003年9月にかけて季節ごとに4日間(平日3日、週末1日)の食事記録を4回行っています。これらの地域はそれぞれ異なる地理的特徴と食習慣を持っているため選ばれました。
研究対象の方々(参加者)が食した食品は、合計で1396種類でした。
その中で、101種類が「完全に発酵食品」、104種類が「部分的に発酵した食品」でした。
(詳細が公表されている文献では確認できなかったため、全種類の内訳は分かりません)
完全に発酵食品:全成分が発酵によって製造された食品
部分的に発酵食品:発酵成分と非発酵成分が混ざった食品(この中から発酵に関わる部分を計算に使用)
そして、参加者は1日あたり平均で発酵食品を438グラム摂取していました。これは参加者の1日あたりの総食品摂取量の約17%にも相当していました。いかに日本人の食生活に発酵食品が根付いているかが分かる数値ですね。

ただし、その発酵食品の摂取量は研究内では
ビール、コーヒー、パン、ヨーグルトと上位から続いていて、「日本の伝統」という食品群では無い結果です。この次の5位に醤油が続き、8位に味噌が続いています。こうした日本独自の発酵食品は「調味料」であることが多いため、量では上位に出てきていません。
一方で、量ではなく「どれだけの人が使っているか」を見た指標では、鰹節、味醂、醤油、酢、味噌は100%の人が使っていることがわかっています。やはり、日本の伝統的発酵食品はどの地域の人にも根付いた食品だとわかりますね。

エネルギーや栄養摂取量にどのくらい関連しているか?
次に発酵食品からのエネルギーや栄養摂取量が、普段の食事にどのくらい関連しているかが検討されています。
発酵食品からのエネルギー摂取は、参加者の総エネルギー摂取量の18%を占めていました。
栄養素別で見ると、発酵食品摂取は「ナトリウム(塩分)」摂取に大きく関係していて、その寄与率は46%にも達しています。
他の主要な栄養素の寄与率は、マグネシウムで22%、カルシウムで20%でした。さらに、ナイアシンは18%、水溶性食物繊維・不溶性食物繊維共に16〜17.5%でした。微生物が発酵によって作り出すビタミンは、ビタミンB2が15%、葉酸が14%、ビタミンB12が8.5%、ビタミンKが12%でした。特にビタミンKはほぼ納豆から由来しています。

この研究結果から考察できること
この研究をまとめると、発酵食品は日本人の食事に大きな割合を占めていて、全体の食品摂取量の17%、エネルギー摂取量の18%を発酵食品が占めていました。
ただし、その上位品目にはビール、コーヒー、パン、ヨーグルトが入っているため、日本独自の発酵食品だけに絞ると割合は変わる可能性があります。
一方で、他の研究では日本古来の食事スタイルよりも、コーヒーなどを取り入れた混合スタイルの方が健康指標は高いデータもあるため、現在の日本の健康的な食事スタイルは混合タイプと考えた方が無難だと思います。
また、ナトリウム(塩分)が発酵食品の寄与率46%はかなり多い印象ですね。以前から発酵食品は塩分濃度が高いので取り過ぎには気をつけましょうと言われてきましたが、それを日常の食事から示した数値になっています。
私が一般の方に栄養解析をしても、みなさん塩分がかなり多めに検出されるため、全体の総量に気をつける必要があります。
日本人の食生活に発酵食品が広く根付いていることがよく分かる研究結果です。発酵食品の健康効果はこれからも研究され続けていくと思いますし、日本人の健康維持増進に役立ち続けていくはずです。
その中で、ビールが1位ということでアルコールの過剰摂取に要注意ですし、ナトリウム摂取量にも十分な注意が必要です。発酵調味料として使用する際の量を少量にすることも大切でしょう。また、摂取量が多い「パン」はナトリウムの摂取源としても上位に入っています。少量しか使用しか発酵調味料よりも、たくさん食べるパンの方が塩分に大きく関係しているかもしれません。
醤油も、発酵調味料として少量しか使用しないのに摂取量が5位ということは、塩分が多いのに摂取量が推奨よりも多すぎる可能性もあります。

今回の研究は対象地域が西日本に偏っていることもお伝えしておきます。北陸地方や東北なども種々の伝統的な発酵食品があり、食生活も様々です。こうした地域の情報も今後解析されると、より日本全体の精度が高まっていくでしょう。
「食」は何かだけを対象にして食べる食べないを判断するものではありません。栄養成分値と、実際に食べる量をきちんと判断して、全体でバランスの良い食生活をすることが大切です。
(参考文献)
Public Health Nutr. 16, 1-27 (2004)


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