今回ご紹介する論文は、アメリカ人の過体重または肥満の成人に対して、アボカドを毎日摂取した際の腸内細菌や代謝物の変化を調査している内容です。
私もアボカドが好きで、毎週アボカドを使ったサラダが食卓に並ぶので、日常的に取り入れている食材の一つです。
アボカドに含まれる代表的な栄養素
アボカドは栄養価が高い優れた食材として知られています。特に食物繊維と一価不飽和脂肪酸(MUFA)を豊富に含んでいます。これらの成分は心血管疾患のリスクを低下させ、インスリン感受性を向上させることが知られています。また、アボカドはビタミンE、ビタミンK、葉酸、カリウム、マグネシウムといった必須ミネラルとビタミンも豊富に含まれており、これらは骨の健康、血圧の調整、抗酸化作用など、多方面にわたる健康効果をサポートします。
過体重、肥満対象者に対するアボカド摂取の効果
この研究はアメリカ人を対象としていますが、過体重と肥満は世界的に大きな健康問題となっています。この研究の対象者のように、BMIが25以上になると心疾患、糖尿病、特定のがんのリスクを高めます。こうした肥満の問題に対抗するため、食生活が重要な役割を果たしています。
<対象者と摂取量、摂取期間>
この研究では、25〜45歳の成人男女163名で、BMIが25以上の人を対象に、アボカド(男性175 g、女性 140 g)を含む、含まない食事(1日1回)群に分けて、12週間摂取しています。
アボカド175 gは、通常サイズ1個の重さになります。(種を除くと少し重量は減ります)
<結果>
12週間アボカドを1日1個程度摂取したところ、以下の結果が得られています。
・腸内細菌叢の多様性が増加
→腸内細菌の多様性は健康状態と深く関わっています。肥満や疾患を持つ人では多様性が減少していることがわかっているため、多様性が増加することは健康的な腸内細菌叢に近づくことを表しています。
・Faecalibacterium、Lachnospira、Alistipesといった属が顕著に増加
→これらの細菌は、腸内で炎症を抑制する健康成分である短鎖脂肪酸を作り出すことが知られています。食物繊維をお腹の中で発酵させて短鎖脂肪酸を作るため、アボカドの食物繊維(水溶性ヘミセルロースや、ペクチンなど)が有効であることを示しています。
・糞便中から検出される酢酸が18%増加、ステアリン酸が70%増加、パルミチン酸が98%増加
→酢酸は短鎖脂肪酸の一種ですので、腸内細菌叢の変化が関係しています。またステアリン酸やパルミチン酸のような飽和脂肪酸が増加することで、アボカド摂取群の脂質代謝を変化させると考えられます。
過体重や肥満の人は、二次胆汁酸が過剰に作られる(健康には欠かせませんが、増えすぎると肝臓などに悪影響です)ことが知られています。アボカド摂取群では、脂肪の摂取量が多かったにもかかわらず、こうした胆汁酸の過剰な分泌が抑制されていました。
このように、アボカドを12週間毎日摂取することで、腸内細菌の多様性が増え、食物繊維を発酵させる善玉の微生物が腸内で増加して短鎖脂肪酸が増えることが示されています。
アボカド摂取のその他の健康作用
アボカドの健康作用は、その他の文献でも報告されています。代表的な内容は以下の通りです。
・アボカドの定期的な摂取は低体重と関連している
・1週間から12週間のアボカド摂取により満腹感が増加して血中脂質濃度が低下する
特に、総脂肪と飽和脂肪の多い欧米食は、過剰に胆汁酸が分泌されます。胆汁酸は肝臓にある胆管から分泌され、脂肪の吸収に欠かせない働きをしています。でも、増えすぎた胆汁酸はリトコール酸やデオキシコール酸へと変化し、善玉菌を減少させ、腸に炎症を引き起こしてしまいます。
普段から脂肪分の多い食事をしている方、外食が多く脂肪の摂りすぎが気になる方は、定期的にアボカドを食事に取り入れることで脂質代謝が改善される可能性があります。アボカドに含まれる食物繊維ペクチンは、リンゴやキャベツ、じゃがいも、グリーンピースなどにも含まれています。「毎日アボカドはちょっと…」という方は、こうした食材を色々と取り入れてみましょう。
(参考文献)
J Nutr 2021;151:753–762
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