風邪予防やウイルス感染予防のために、体温を高く保ちましょうと言われます。でも、どうして体温を高くすると風邪予防になるのでしょうか?
なんとなくイメージで、「免疫が高くなりそう」「戦う力が強くなりそう」と感じますよね。それを実際に実証している研究があるのでご紹介します。
外気温が高いと体温が上昇し、ウイルスへの抵抗性が上がる
この研究では、マウスを使って外気温が「4℃、22℃、36℃」の環境下で飼育した時の体温の違いと、インフルエンザウイルスへの感染状況を調査しています。その結果、それぞれの外気温下では以下の平均体温でした。
(マウスは体が小さいので体温が変化しやすく、元々人間よりも1〜2℃くらい体温が高めです)
4℃で飼育→体温およそ36.5℃
22℃で飼育→体温およそ37.2℃
36℃で飼育→体温およそ38.8℃
このように、外気温が上がるごとに体温が上昇しています。人間でいうと、真冬、春秋、真夏、といったイメージですね。22℃は夏場にエアコンを使っても同じような外気温になるでしょう。

そして、このときにインフルエンザウイルスに感染すると、マウスがどのくらい生存できるかも調査されています。結果的には、
4℃で飼育→体温およそ36.5℃ :感染後に体温がどんどん低下し、最終生存率0%
22℃で飼育→体温およそ37.2℃ :感染後に体温が3℃程度低下、最終生存率20%
36℃で飼育→体温およそ38.8℃ :感染後も体温は低下せず、最終生存率100%
このように、外気温が高いと体温が高く保たれ、インフルエンザへの感染抵抗性がとても高いことがわかります。人間でも、熱が出たときに無理に熱を下げず、ある程度高い熱を出す方がウイルスに対抗できると考えられます。(40℃など高すぎる熱は体の他の部位に支障が出るため、多少熱を下げるべきです)

外気温が2℃違うだけでも腸内細菌の活性化に影響する
次に、外気温が34℃と36℃という、たった2℃の違いが体温に与える影響が検討されています。その結果、34℃の環境で育てられたマウスは体温がおよそ37.2℃であったのに対し、36℃で育てられたマウスは38℃以上の体温を維持しました。
そして、34℃で育ったマウスはインフルエンザに感染して死亡したのに対し、36℃で育ったマウスは100%の生存率でした。私たちも、感覚的に体温が0.5℃程度違うだけでも「今日はダルいな」「なんとなく体調悪い」と感じると思います。そのため、わずかな体温であっても高く保つことがとても大切です。
さらに、34℃と36℃の外気温で育ったマウスの腸内細菌叢についても調査されています。
34℃マウス:変化が見られなかった
36℃マウス:腸内細菌叢が変化し、胆汁酸生産が促進され、インフルエンザウイルスの細胞内での増殖を抑制した

このように、体温が上がると腸内細菌が活性化して胆汁酸代謝に影響を与えることが示されています。特に、腸内細菌が作る二次胆汁酸の一種のデオキシコール酸(DCA)が、ウイルスの細胞への侵入や複製を防ぐことで、宿主の抵抗力が向上しています。
新型コロナウイルス(COVID-19)患者の胆汁酸レベルと症状の相関
新型コロナウイルス(COVID-19)患者では、胆汁酸が顕著に減少していることが報告されています。そして、この胆汁酸の減少がCOVID-19の症状の重さと関連していて、重症になると胆汁酸のレベルが低下し、免疫力も低下します。
実は、体温が上がったときに増えた「デオキシコール酸(DCA)」は、他の研究では「肝がんを引き起こす」として悪者の胆汁酸と言われています。これは、過剰に作られるDCAが有害なのであって、普段は生体内で大切な働きをしています。

<DCAの正常な生理的役割>
・消化を助ける:脂肪の消化吸収を助け、胃腸の機能をサポート
・代謝調節:脂肪の代謝やエネルギーバランスの調節
・殺菌作用:腸内の有害な細菌の増殖を抑制する
<DCAの過剰リスク>
・肝障害:DCAは肝臓での炎症や細胞の損傷を引き起こし、長期的に肝がんリスクを上昇させる
・腸の炎症:高濃度のDCAは腸の炎症を引き起こし、炎症性腸疾患の悪化につながる
日本人成人(20〜80歳)の便中胆汁酸を調べた研究では、成人の多くが胆汁酸のうちデオキシコール酸が90%以上を占めることもわかっているため、日本人のウイルス感染防御力が高いのは胆汁酸が関連している可能性もあります。
DCAは、加工肉や脂質が多い食事で過剰に増えてしまうため、食事面では食物繊維を多めに、脂質は少なめにというバランスが大切です。そして、体温を高く保つ生活を心がけ、運動や入浴、朝食をしっかり食べて食事誘発性熱産生を高めるなど、少しずつの工夫でウイルスに強い体づくりを心がけていきましょう。
(参考文献)
Nature Communications 14, 3863 (2023)
Nature 499, 97-101 (2013)


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