多くの日本人は塩分摂取量が過剰です
高血圧は心血管疾患の最も一般的な危険因子であり、日本でも成人の多くが罹患しています。高血圧の有病率は年齢とともに増加し、特に高齢者において高い割合を示しています。高血圧は多因子疾患であり、その発症には遺伝的素因、環境要因、およびそれらの相互作用が関与しています。
高血圧のリスクを高める環境要因として、食事、運動不足、過体重および肥満、喫煙、心理的ストレスなどが挙げられます。特に、日本では塩分摂取量が高いことが高血圧の顕著な危険因子として知られています。
厚生労働省が推奨する「日本人の食事摂取基準」では、ナトリウム(食塩相当量)の摂取量は成人男性で1日7.5g未満、成人女性で1日6.5g未満とされています。しかし、実際の日本人の平均摂取量はこれを上回っており、例えば国民健康・栄養調査では、成人男性の平均摂取量は約10g、成人女性では約9gであると報告されています。このため、食塩摂取量の削減が健康維持において重要な課題となっています。
私自身、サービスの一環で栄養解析をしていても、食生活にとても気をつけている方の結果が塩分過剰な場合がほとんどです。
塩分は日頃の様々な食べ物に含まれています。ラーメンやうどん、食パンにも多く含まれますし、カレーライスも要注意です。また、現代は加工食品が数多く流通し、コンビニエンスストアにも様々なお弁当や食品が増えています。こうした加工食品(超加工食品)には塩分が高濃度に含まれる場合があります。日頃外食が多い方は、特に塩分の量に注意しましょう。
さらに日本では、味噌汁や漬物、醤油を使った料理など、伝統的な食文化が塩分摂取の主要な要因となっています。健康に良いからと発酵食品を過剰に使ってしまうと、塩分摂取量がどうしても増えてしまいます。これらの食品を減らすか低塩の選択肢を増やすことが高血圧予防において有効です。厚生労働省や日本高血圧学会は、特に高血圧患者やリスクが高いとされる中高年層に対して、塩分摂取の制限を強く推奨しています。

高塩分食が乳酸菌に及ぼす影響
近年の研究で、高塩分の食事が腸内細菌叢に及ぼす影響が明らかになりつつあります。特に注目されているのは、乳酸菌の減少です。乳酸菌は、腸内環境のバランスを保つために重要な役割を果たしており、抗炎症作用や病原体の抑制など、宿主の健康に多くの恩恵をもたらします。しかし、高塩分食を続けると、腸内の乳酸菌が減少し、その結果として腸内環境全体が乱れる可能性が指摘されています。

高塩分食が腸内細菌叢に与える影響については、動物実験やヒトを対象とした研究で検証が進められています。特に、高塩分の食事が続くと、腸内の乳酸菌が急速に減少することが確認されています。この減少は、一時的なものであれば回復する可能性がありますが、長期間にわたる高塩分食は、乳酸菌の回復を妨げる可能性があります。腸内で乳酸菌が減少すると、病原菌が繁殖しやすくなり、腸内のバリア機能が低下し、炎症が促進される恐れがあります。これは、高血圧のリスクをさらに高める一因となる可能性があります。
乳酸菌の減少と現代社会の腸内環境
実は現代社会の多くの人々の腸内には、乳酸菌がほとんど存在しないことが報告されています。実際、腸内細菌解析をすると乳酸菌が検出されない人が数多くいらっしゃいます。これは、西洋化された食事、加工食品の多用、そして高塩分食が乳酸菌の減少につながっているのではないかと考えられています。

伝統的な農業社会と比較して、現代の工業化された社会では、塩分(ナトリウム)を多く含む食品が一般的に消費されており、これが人間の腸内から乳酸菌を減らしている可能性があります。
乳酸菌は腸内の主流細菌群ではないものの、その存在は腸内環境の健康において重要です。特に小腸では、乳酸菌は免疫を活性化するために欠かせない役割を果たしています。乳酸菌の減少が進むと、腸内環境は悪化し、消化機能や免疫機能にも影響を及ぼすことが懸念されます。さらに、乳酸菌の減少は、栄養素の吸収効率にも悪影響を及ぼし、全体的な健康状態に対するリスクを高める可能性があります。
健康な腸内環境を取り戻すために
やはり、高塩分の食事を見直し、乳酸菌の減少を防ぐことが重要です。具体的には、塩分の摂取を控えるとともに、乳酸菌を含む発酵食品やプロバイオティクスの摂取を増やすことで、腸内に乳酸菌による刺激を与えることが大切です。これにより、腸内環境を整え、全身の健康維持に寄与することが期待されます。
塩分の摂取量に意識を向けて塩分の少ない食事を選ぶことが、腸内細菌叢のバランスを保ち、健康的な生活を送るための一歩となるでしょう。
(参考文献)
Sodium, hypertension, and the gut: does the gut microbiota go salty?Am J Physiol Heart Circ Physiol 317, 1173–1182 (2019)


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